般若心経を青空に解き放とう!
般若心経の話をすると、どうも耳なし芳一の話を思い出して受け入れられないという人がいた。そういえば、一般の人は、般若心経を聞くのは、だいたいお葬式とか不幸のあった時なので、暗い印象を持ってしまってもしかたないのかもしれない。しかし、実際には、その内容は、暗く重いこの世の情念の世界から、人を透明で青く澄んだ空のような空へと解放してくれる素晴らしいものだと思う。
しかも、日本では、空海の昔から1200年以上は、唱えられているにも関わらず、その内容は今でも新鮮で全然古臭くなっていない。それは、人間の本質、変わらぬ真理を端的に表現しているからだろう。だから、自分としては、青空に響き渡るように般若心経を唱えたいと思っている。
「花の色はうつりにけりな いたづらに」というが、桜の花に限らず、季節が移るにしたがって、どんどん新しい花が咲いては、色あせてゆく。同じように空の色も季節によって変化している。冬が終わり、春になり初夏を思わせる日が続く今となっては、同じ青でもすでに霞んであまりきれいではなくなってしまった。澄んだ寒い冬の空の方が、空の色もきれいに映える。同じように今年のように厳しい環境にある時の方が、人は真実を必死になって求めるのかもしれない。そんな澄んだ心に響く般若心経を気持ちよく唱えて青空に響かせ、少しでもこの苦難を乗り越えるための励みになればと思う。