治療の価値とは
先日、久しぶりに治療に来た患者さん。なんでも業を払うと言って体をひっかく治療に行って来たと言った。はじめは一回3万円だったのだが、次にわざわざ友達を誘って遠くの街まで行ったら、突然10万円と言われたそうだ。しかたないので二人で20万円払って帰って来たという。
その患者さんが、達磨大師の絵を見て、やはりそのような物があったと言ったので、祭壇に飾ってある石の破片を取って「これは達磨大師が座禅をした洞窟の石だよ。以前、中国の少林寺に行った時に洞窟まで行って、拾って来たんだよ。」と言って渡した。そして、「まあ、そうして高い治療代を払うのもいいけど、本当の気力ってのは、自分の内側から沸きあがって来るんだから、般若心経を毎日100回唱えた方が、気力も運気も上がるんじゃないの。」と付け加えた。
人は、いつも遠くに素晴らしい物があるとあこがれる。しかし、本当に素晴らしいものは、今ここにいる自分自身の中にあるものだ。わざわざ高い電車賃を払って遠くに行かなくとも、繰り返し繰り返し般若心経を唱え続けるだけでも、身体の中心から気が湧きあがり、元気がいっぱいに満たされてくるものだ。薬師堂の治療代は、3千円でもう30年以上同じ値段で続けている。本当は、6千円ぐらいもらってもいいのではと思うこともあるが、半分は皆さんのために奉仕しているつもりでこの値段に設定している。また、3という数字にも意味があると思うし、患者さんも払いやすいのではないかと思っている。治療の価値は、その値段にあるのではなく、相手のことを気遣う優しさの中にこそあるのだと思う。